横浜でクリエイティブな活動をする方々を、インタビューで紹介。クリエイティブの現場の生の声をお届けします。

第9回:逢坂恵理子さん(横浜美術館館長・第4回横浜トリエンナーレ総合ディレクター)

今回は、横浜美術館館長であり、第4回横浜トリエンナーレ総合ディレクターに就任された、
逢坂恵理子さんにお話を伺います。

Q. 第4回横浜トリエンナーレがいよいよ来年8月に始まります。これまでは国際交流基金が中心になって開催されていたトリエンナーレですが、10年目を機に、今回からは横浜が運営の主軸になって実施されるそうですね。そのことが、どのようにトリエンナーレに影響するのでしょうか?

 これまでは、いずれの回もパシフィコ横浜や港のそばの倉庫を使ったり、赤レンガ倉庫を使ったり。横浜トリエンナーレは毎回会場が変わるのが特徴でしたが、横浜市も国際交流基金も第4回展については、横浜美術館が中心会場になってほしいという意向を持っていました。その利点は、美術館が核になることによって、蓄積ができるようになることです。そして、継続への道筋も一歩進んだかな、という気がします。

 また、横浜トリエンナーレのソフトの部分をずっと推進してきた国際交流基金が主催に入らなくなったことで、事務局機能も横浜美術館が中心となって、横浜で一から作り上げなければならない。運営も引き受けてゆくということです。これはかなり大きな変化ですね。

 つまり、私たちは現在、事務局機能を作ること、展覧会をつくること、この2つを限られた短い期間で同時進行でやらなければならない。予想よりはるかに大きな仕事量ですね(笑)。
Q. 場所も横浜美術館が中心になることで、テーマもこれまでと違ったものになるのでしょうか?
 プレスリリースには、“世界をどこまで知ることができるか”という言葉を掲げています。21世紀になって、技術革新や科学の発展により、私たちは自分たちですべてを把握できる、世界を知ることができる、今まで知らなかったことを解明することができると考えるようになりました。例えば、DNAの解析が進み遺伝子操作もできるような世の中になって、人間はなんでも自分の手の中に収められる、という、ある種の傲慢さもあると思います。でも一方で、人間の叡智を以ってしても理解することのできないものもあるわけですよね。その意味で、世界の多様性や不思議を、どのように美術を通して示すことができるか。これが今回の大きな特徴です。  
Q. 新しいものだけではなく、横浜美術館のコレクション作品なども活用する国際展にしようということですが?
 今までは仮設会場が中心でした。そのような場所では、例えば日本画のような、微妙な湿度管理が求められる作品は展示できません。でも、横浜美術館が会場になることによって、過去3回のトリエンナーレではできなかったことですが、横浜美術館のコレクションや古今東西の作品を現代美術に加えて展示したいと思います。

現代美術というと、まず分かりにくいというイメージを持つ方が多いと思います。でも、作品は、すべて、世の中に出てきたときには、「現代美術」なんです。だから、美術のもつ力を、みなさんが、知識としてではなく、むしろ体験的、直観的に楽しめるように、古い作品から新しい作品まで、盛り込んでいきたいと思っています。
Q. 公立の横浜美術館とオルタナティブスペースのBankART Studio NYK、という異なる性質をもつ2施設がメイン会場となるそうですが、その他にサテライト会場のようなものは?
 どちらかといえばカチっとしたオーソドックスな公立美術館と、BankARTのようなオルタナティブスペースといわれる、新しい作品をどんどん展示できる場―この組み合わせが、美術の多様性を示すのにすごくいい。

BankART Studio NYK
横浜美術館

 BankARTにしか展示できないようなものもあれば、美術館だからこそ展示できるものもあると思います。この2つの主会場を核にしながら、これまでユニークで魅力的な活動をしている市内のさまざまな組織やスぺースと連携をしていきたいと考えています。
Q. 横浜は、頑張れば歩ける範囲に様々なスペースがあるので、横浜トリエンナーレを訪れることで横浜のオルタナティブな活動が見え、点が平面になる形で街を楽しむことができますね。
 例えば、越後妻有という地域はアクセスが悪くても、やはりみんなトリエンナーレを見たいから、車を使ったりして出かけますよね。横浜、特にみなとみらい地区は公共交通機関も整ってはいますが全てを歩いて回るのは難しい。これまで歩かなかったところを歩いてみよう、という気持ちになるような会場をいろいろなところに設けられればいいなと思っています。
Q. 横浜都心部の“創造界隈エリア”は、横浜の中でもアートが盛んな地区ですが、横浜美術館が中心となることで、このエリアの特徴が際立ってくる良い機会になるのでは?
 横浜は、トリエンナーレと並行して、創造界隈や映像文化都市などさまざまな活動があって、市や大学やNPOなどいろいろなタイプの市民がアートに関わる間口が広かったと思うんですね。その中でトリエンナーレのような大型の国際美術展が横浜美術館を中心に開催される、これは横浜を国際的に発信するよい機会になっていくのではないでしょうか。

 横浜は港に面していて、風や空気がとても心地よく開放的です。特に私は六本木エリアから来たせいかもしれませんが(笑)。港、海が見えるというのはすごく人々をリラックスさせるので、来年は暑過ぎる夏にならないことを祈りつつ(笑)、みなさんが横浜の街の中を回遊してくれるようになるといいな、と思います。