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「関内外OPEN!」は、横浜の都心部に集うアーティスト、クリエイターたちのアトリエや事務所を期間限定で一般公開するオープンスタジオを通じて、彼らと出会い、ヨコハマの魅力と活力をより深く知ってもらう、また彼ら自身が交流することで、ヨコハマの魅力をより深めてもらうイベントである。
横浜では、港や歴史的建造物といった都市の資産を活用し、文化芸術のもつ創造性を活かした都市づくりを行う創造都市の取り組みを進めているが、さらに遡れば1960年代より続く、都市の魅力づくりを進める都市デザインの取り組みがあり、それを支える専門家が広く集まってきていたことが、ベースとなる蓄積としてある。こういったイベントが実現できるのもこれまでの取り組みの成果である。
今年第2回目となる「関内外OPEN!」では、新たな試みとして、こういったクリエイターたちがつくり上げてきた作品を巡るツアーを企画した。現在、横浜の建築・まちなみをつくっている人たちに、彼ら自身の言葉で語ってもらう、というツアーである。
| 日時: | 2010年9月11日(土)・12日(日) | |||||||||||||||||||||
| ツアー概要: | ||||||||||||||||||||||
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1) 「新しい住宅のかたち」
講師:オンデザインパートナーズ 代表 西田 司
ヨコハマアパートメント
集合場所は京急戸部駅という、関内から離れた場所からのスタートにも関わらず、今回、一番人気だったツアーである。ヨコハマアパートメントのある古くからの家並みが密集する町の雰囲気を感じてもらうため、参加者にはアップダウンのある狭い坂道を、かなりの道のりを歩いていただいた。西田さんとの待合わせは、そんな住宅地の一角。ラフな休日スタイルにお子さんも一緒と、実際に住まいとされている生活感を感じさせる親しみやすいいでたちで登場。
西田さんによる建築は、建物所有者の絶対的な理解のもとにつくられた斬新なもので、新しいコミュニティのあり方を提案している。屋上に続くかと思われる階段の先にコンパクトな住室があり、四方をそれらに囲まれた形で、高い階高をもつ交流スペースが存在する。周囲から見ると舞台のように浮き立って見えるこのスペースや周辺を如何に使うかがポイントとなる。当日は雰囲気を楽しんでもらうべく、講師自らが流しそうめんを企画してくださり、暑い昼下がりにもゆったりのんびりした気分を満喫しながらの見学となった。
2) 「建築入門〜コルビュジェさんのお弟子さんたち〜」
講師:アートオブライフ 代表 五十川藍子
神奈川県立音楽堂
タイトルにあるとおり、著名な建築家であり都市計画家でもあったコルビュジェの設計思想と、彼が設計した国立西洋美術館について、分かりやすく解説した著作をもつ五十川藍子さんに、建築をできるだけ平易に解説してもらう入門編のツアーをお願いしたものである。ご本人にとっては、自身の設計でない建築を解説するという存外に難しいツアーにチャレンジしていただいた。
前日新聞でこのツアーが紹介されたこともあり、人気が高く、参加者は女性が比較的多い中、ご夫婦での参加や、建築系の若手から比較的年配の男性まで、幅広い年齢層、性別の参加があった。
シルクセンターでは、普段は出られないテラスも開放していただいたが、この建築そのものが好きで参加した人が多く、熱心な写真撮影大会となっていた。その後、紅葉ヶ丘ゾーンへとバスで移動。神奈川県立青少年センター前で、コルビュジェの思想や坂倉準三、前川國男ら弟子たちとのつながりを改めて説明。神奈川県立図書館では、鉄骨造の書庫で迷子になりそうになりながら、最後に神奈川県立音楽堂で、伊藤館長から、手すりの曲がりやロビーのモザイク、蛍光灯カバーなど、当時の時代背景にある手づくり感を含め、施設に愛着を持っている方ならではの説明を受けた。
施設的にも盛りだくさんで、講師の熱心な説明もあったため、改めての機会があればより時間を十分にとって行いたい内容であった。
3) 「港・横浜―海辺の現代建築―」
講師:小泉アトリエ代表 小泉雅生/エイバンバ 番場俊宏 (象の鼻パーク・テラス)
昭和女子大学准教授 田村圭介 (横浜港大さん橋国際客船ターミナル)
象の鼻パーク
海辺の現代建築ツアーは、国際コンペにより設計・建築された横浜を代表する現代建築である横浜港大さん橋国際客船ターミナルと、やはりプロポーザルコンペにより設計・整備された象の鼻パーク・テラスを、それぞれの設計者が解説するという豪華な2本立てとなった。
日曜日にしては朝早いツアーの出発にも、開館早々の象の鼻テラスには熱心な参加者が次々と集まり、9月とは思えないほど暑い日差しの照りつける象の鼻パークへとスタート。
象の鼻パーク内には、いたるところにトラップのように謎が仕掛けてあり、小泉さんがその都度立ち止まり、玉手箱を開けるように解説をしていく。設計思想もさることながら、掘り起こされた歴史的資産、転車台や防波堤の石などを施工段階で調整しながら設計に取り込んで行くことにもおもしろみがあり、仕上げや手すりの調整なども含め、ディテールにわたった解説があった。
一方、2002年、8年前にオープンした大さん橋ターミナルについては、昨年オープンした象の鼻パークと比較して、詳細な設計内容を聞く機会が減っていた。今回、この機会に、海外の設計事務所であるF.O.Aの日本人スタッフとして、当時設計に携わっていた田村さんに講師をお願いすることができた。柱・梁ではなく橋梁・折板によって支えられている特殊な構造、空調の吹き出しの工夫、片持ちの精度、施工者の違いによるおさまりの違い、など現場でのエピソードを交えた専門的なディテールの解説に、参加した建築家も新しい発見があったと言い、たまたま桜木町でチラシを見て参加したという一般参加者にも設計のおもしろさが伝わっていた。
4) 「横浜地方気象台」
講師:横浜市都市デザイン室 桂 有生
横浜地方気象台
気象台ツアーには、現地の近くにお住まいの方や、休みの日に前を通る時、いつも中に入ってみたいと思っていたという方など、これまでのツアーにはなかった参加者が見られた。ご夫婦等の参加者も多く、そのためか男性陣が多め。ツアー中(休日は一般公開されていないにも関わらず)外部から覗き見する人が続出し、OPEN YOKOHAMAの醍醐味が味わえるツアーとなった。今回、特別に休日に対応していただいた横浜地方気象台 阿部総務課長には感謝申し上げたい。
講師の桂さんは横浜市入庁以前に、安藤忠雄建築研究所に在籍の経験があり、この建物について新旧両面の解説ができる方としてお願いした。また、集合場所である元町・中華街駅から気象台へ到る道すがら、山手にとっては駅からの動線として悲願であったアメリカ山公園が、見晴らしのよい庭園空間として整備されており、こちらについても合わせて解説をお願いした。昨年オープンということもあり、まだ来たことのない、知らない人も多く、こちらもOPENな機会となった。
旧館部分については、地下室の地震計など、阿部課長の熱心な説明に、気象台そのものの業務や歴史についても興味をもつ方が多く、空調のない空間を参加者の皆さんには頑張っていただいた後、屋上に上がり山手からの眺望を堪能。
新館では、安藤建築の特徴的な打ち放しの仕上げデザイン、柱の角のディテールや、中2階的な空間づくりなどについて説明があった。建物1棟をじっくり見た形となり、最も時間が押したツアーでもあった。
5) 「建築家の職と住」
講師:みかんぐみ パートナー 曽我部昌史
みかんぐみ
二番人気で早めに定員いっぱいとなったのがこちらのツアー。圧倒的に比較的若い女性参加者が多く、曽我部さんファンの学生さんもいらしたようだ。
まず集合場所のヨコハマ創造都市センター(YCC)で、みかんぐみ設立の経緯や名前の由来を教えていただき、ひとわたり導入で馴染んでいただいたところで、みかんぐみ事務所に移動。プロジェクター投影にて、事務所の改修・リノベーションの説明をしていただく。ちょうどオープンスタジオに来訪した参加者も、熱心に一緒になって話を聞いていた。
曽我部邸への移動は、電車での大移動になったが、参加者の皆さんの多大なる協力により、一丸となってスムーズに進んだ。行き着いた住宅地の道の奥のつきあたりに黒い外観の玄関だけが見える。当初からそういう条件で探していたという北側斜面に面し、ダイニングのワイドな窓空間から、また屋上のテラスから、眼前には緑の谷が広がる。
20人もの人間が個人の住宅に入れるのかという不安をよそに、リビング、ダイニングの空間にすっぽりと納まり、すっかりくつろいで話を聞くことになった。説明を聞く間も、この後の集まりに向けてダイニングの向こうのキッチンへとたくさんの人の出入りがある。かつて一緒にワークショップを行った学生チームが、社会人になった今でも定期的に集まっているとのこと。月に何回かは、こうやって人の集まる空間になっている。
リビングの壁一面のアーティスト浅井祐介さんの絵やパンチング状の階段の下から蓄熱暖房機の温風が上がってくる仕組み、凝ったディテール、遊び心のある間取りに、もう少しお子さんが小さいときに建てられればとの弁もあり。
曽我部さんの人柄からか、プライベートな空間でもOPENに人を受け入れてくれる雰囲気があり、ほんわりと温かい気持ちになる、「お宅訪問」という形になった。
ツアー全体を通して感じたこと
◇第一に、思った以上にチラシなどに目を留めた一般の参加者が多かったこと。
チラシの目立つ効果か、また新聞を見て参加してくれた方もいた。このため、東京などからの参加よりも圧倒的に横浜の参加者が多かった。
◇第二に、幅広い年齢層、性別、分野の方の参加があったこと。
建築系の若手から、30代ぐらいの女性、カップル、ご夫婦、古い建築物に関しては比較的年配の方と、10代以下の若い世代以外のさまざまな世代から、性別に偏りなく参加があった。
◇第三に、複数のツアーにまとめて応募した人が多かったこと。
ぎりぎりのスケジュールを組んでいたので、複数参加はあまり想定していなかったが、最大で5つのツアー全てに申し込んだ人があり、関心のある人にとっては、時間が許せばできるだけたくさん見たいという気持ちがうかがえる。
◇第四に、講師である建築家の方々には、誰に向けてガイドをするのか非常に気を遣っていただいたこと。
構造や仕上げのディテールの説明が専門的になりすぎないよう、言葉を選ぶなど、知ってもらうことに対する意欲と、共有する時間をできるだけ楽しんでもらうための創意工夫に満ち溢れたガイドの仕方には、プロとしての力を感じた。
◇第五に、一般参加者の方が、専門家のディテールの説明に非常に興味を持っていたこと。
むしろ、その部分こそが、普段知ることのできない部分のOPENであり、心惹かれていたように見える。
◇第六に、ツアー全体に不思議な一体感があったこと。
適度な人数、限られた時間、空間の中でのツアーで、講師との距離も近いことや、複数のツアーに参加していた人も多かったことが影響したからか、机を並べた講演会では聞きにくい質問も、直接的に1対1で聞きやすかったようである。ツアーは現場で実物を見て実体験できるのも大きな魅力といえるが、講師のツアーを盛り上げてくれようとする努力と、参加者の単なる聞き役ではない積極的な協力があった。
専門的な説明も一般参加者には興味深いものであり、これだけ関心の高い人が集まってきているということは、質の高いものに対してアンテナを張っている、感度の高い人が増えていると言える。創造都市の推進をともに支える横浜市民に質の高い空間への関心が高い人が多いということは、大きな力であり、オープンスタジオやツアーを通じてクリエイターらと場を共有し、相互に情報を得て交流し、高めていくことのできる機会を、これからもつくることができればと思う。さらに、今回は参加のなかったより若い世代に向けても、参加の場を設けて行きたいと思う。