発行日 2011年10月25日

アートウェブマガジン ヨコハマ創造界隈

vol.14

Catch UP! イベントレポート

横浜・寿町で、2008年から行われているアートプロジェクト「KOTOBUKI クリエイティブアクション」。<br />
	立ち上げから関わってきた、アートプロデューサーの橋本誠さんが、これまでの活動を振り返ります。

コトブキ案内2011
—「KOTOBUKIクリエイティブアクション」立ち上げから3年を経て

 

「KOTOBUKIクリエイティブアクション」の活動

かつては簡易宿泊所が立ち並ぶ労働者のまちであった横浜・寿町で、2008年からアートプロジェクトが行われているのをご存知でしょうか。寿町は、現在では生活弱者や高齢者が多く住まう福祉のまちへと姿を変えつつあります。一方で、ここ数年の間にこのまちに新たな可能性を見出すべくまちづくりや文化芸術に関わる活動が増えはじめています。

 

私が立ち上げから関わっている「KOTOBUKIクリエイティブアクション」もそのひとつ。同じ横浜でよく比較される黄金町とは異なり、様々な事情を抱えながらひっそりと生活する方が多く住まい、アート探索を目的に来訪者が押し寄せることが必ずしもよしとはされていないエリアを舞台にしていますから、プロジェクト紹介はツアーや体験プログラムを中心に据え、告知活動はあえて抑えてレポート活動を中心にするなどしながら、徹底的に実験としてこの3年、展開してきました。

コトブキ案内2011」はこの流れ、初期の活動をふまえていよいよ本格的に活動を開いていこうという考えに基づき、横浜の創造界隈が、ヨコハマトリエンナーレ2011やさまざまなアートイベントで盛り上がるこの時期に合わせて実施しているキャンペーン的なプログラムです。簡易宿泊所・ホステルなどの宿泊施設やまちなかを活用したアート作品展示や滞在制作プロジェクト、これらをめぐるツアーやフォーラムなどのイベントを行うものです。

 

 

Hostel Zen Art Project—宿泊アート体験を提供

「コトブキ案内2011」の目玉となっているのが、簡易宿泊所を改装したホステルの客室を宿泊可能なインスタレーションルームにするなどした「Hostel Zen Art Project」です。2008年に外壁へウォールペインティングを描かせていただいた施設なのですが、私たちの継続的な活動への共感と、増えてきたホステルの中でも違いをアピールしたいという狙いがオーナーさん側にもあり、実現しました。

階段室では、建築家ユニット・みかんぐみの曽我部昌史さんが中心となり、神奈川大学曽我部研究室が仮設のプロジェクトを展開、武田陽介さんによる滞在プログラムも行っていますが、見どころは何と言っても3つの客室です。3〜5年は残る常設作品になりますし、宿泊者が長く時間を過ごす空間になりますのでプランニングには時間をかけ、それぞれ異なるキャリアを持ちながらも横浜にゆかりのあるアーティストに制作をお願いしました。

馬車道の宇徳ビルにアトリエを構えている曽谷朝絵さんは、最近積極的に取り組んでいるフィルムシートを使ったインスタレーションを行いました。BankART 1929が新港ピアを会場に展開している「新・港村」での展示にも参加している淺井裕介さんは、襟草丁さんとのコラボレーションで色テープを使った作品を。BankART Studio NYKで私が2007年に企画した「都市との対話」展に参加している塩津淳司さんは、LEDライトを仕込んだ暗闇で怪しく光りうごめく空間をつくりあげています。各室は3畳や4畳半といった狭小な空間ですが、本来の用途であった短期宿泊目的には十分な広さですし、その限られた空間が作品の力で驚くほど豊かになったことに、私自身も驚かされています。

曽谷朝絵《Splash》
曽谷朝絵《Splash》
淺井裕介+襟草丁《テープ森/天籟》
淺井裕介+襟草丁《テープ森/天籟》
塩津淳司《The Tower of Babel》
塩津淳司《The Tower of Babel》

以前は立ち入りにくかったホステルの立ち並ぶ通りもかなり歩きやすい雰囲気になりましたし、JR石川町駅からも徒歩で5分という立地ですので、これを機に多くの方が寿町へ訪れ、現状を感じていただけるとうれしいです。なお客室についてはツアー見学や一般公開日(11/3〜6)以外は宿泊者しか見ることができませんので、ご注意ください。

 

 

新・港村への参加など連携プログラムにおける取り組み

「コトブキ案内2011」は、「OPEN YOKOHAMA2011」「ヨコハマトリエンナーレ2011」「関内外OPEN!」「新・港村」などと参加・連携しながら展開しています。多くの催しが行われている時期ですから、これを機に寿町でのプロジェクトについても知っていただきたいですし、例えばヨコハマトリエンナーレを目的に横浜へ来るけど、泊まりは上記でふれた寿町のホステルにしていただく、などの楽しみ方もできると思います。多様な横浜のまちの雰囲気や、それぞれの場で取り組まれている興味深い取り組みに、ひとつでも多くふれていただきたいと思っています。

「関内外OPEN!」では、先に紹介したHostel ZenやPorto Galleryを拠点として参加。寿町だけではなく、周辺エリア拠点もまわる石川町エリアツアーなどにも取り組みます。

「新・港村」では、同じ寿エリアでヨコハマホステルビレッジを運営しているコトラボさんと合同ブースを設け、「コトブキ案内所準備室」を開設・運営しています。これは近い将来、寿町のエリア内に設けたいと考えている来訪者とまちの人が交流できるスペースのテスト運営という位置づけで、寿町で行われている様々な活動を紹介、情報提供を行っています。実際にこれが町にあったら、という設定で、レジデンスプログラム「寿合宿」参加メンバーが公開制作に取り組む日を設けたり、12月に開催するキャンドルナイト「寿灯祭」で使用するワンカップや灯絵を集める場としても活用したりしています。

「新・港村」に開設した「コトブキ案内所準備室」
「新・港村」に開設した「コトブキ案内所準備室」
「寿灯祭」
「寿灯祭」

また11月3日には、後に紹介するフォーラムの一環にも位置づけていますが、大阪からアサダワタルさん(日常編集家)、上田假奈代さん(ココルーム)、浜松から鈴木一郎太さん(たけし文化センター)をゲストとして、「地域活動と創造拠点」をテーマとしたパネルディスカッションを行います。寿町だけではなく、横浜創造界隈全体にとっても大事なテーマですので、ぜひ多くの方に参加していただきたいと考えています。

 

 

コアウィーク&お泊まりフォーラム

最終週となる11月初旬には、たくさんのプロジェクトをご覧いただくことができます。11月3日から6日にかけては、かながわ労働プラザ(Lプラザ)1階ギャラリーに案内所を設けますので、まずはこちらまでいらしてください。

特に見逃して欲しくないのは、やはりHostel Zen Art Projectの一般公開(3-6日11:00-15:00)。また簡易宿泊所の一室を活用した幸田千依さんや水川千春さんのプロジェクト、ユミソンの音を聞きながら町を歩く体験型作品については案内所での受付が必要ですが、それぞれの表現を通してじっくりとまちの姿に向き合うことができ、おすすめです。

またHostel Zen Art Projectに参加している武田陽介さんや、寿合宿に参加している坂口直也さんによるプログラムも追加で準備中です。

幸田千依+水川千春
幸田千依+水川千春
寿合宿イベント'寿大社'
寿合宿イベント"寿大社"

 

より深く寿町や、プロジェクトについて知りたい方は、ぜひ「第2回寿お泊まりフォーラム」にご参加ください。終日単位を基本として、ゲストも参加者もアーティストもスタッフも可能な限り宿泊をしながら同じ時間を過ごす、体験型のフォーラムです。

これまでの寿町での活動の集大成であり、今後の可能性を模索する機会となる「コトブキ案内2011」のコアウィーク&お泊まりフォーラムに、ぜひご参加ください。そして秋の横浜のアートシーンを合わせてお楽しみいただければと思います。

 

 

コトブキ案内2011

http://2011.koto-buki.info/

期間: 2011年8月6日(土)〜11月6日(日)
※コアウィークは10/29〜11/6、フォーラムは11/3〜5
会場: 寿町エリア、新港ピアほか(横浜市中区)

KOTOBUKIクリエイティブアクション2008-2010

初期3年間の活動をまとめた記録集を発行しています。YCCやBankART1929のショップ、KOTOBUKIクリエイティブアクションのオンラインショップにてお買い求めいただけます。

 

 

プロフィール

橋本 誠[はしもと まこと](アートプロデューサー)

1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動。2009年より、東京文化発信プロジェクト「東京アートポイント計画」プログラムオフィサー。

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