
構成/インタビュー 茂市玲子
テキスト(インタビュー) 平井莉生
写真 高橋宗正
今回は、『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『Cherryblossoms』(リトルモア)などの写真集をはじめ、雑誌「BRUTUS」や「Switch」、YUKI『うれしくって抱きあうよ』、曽我部恵一『けいちゃん』などのCDジャケットのお仕事など、幅広くご活躍の写真家・大森克己さんにお話を伺いました。
北仲スクールの、2010年度後期ワークショップ科目で講師をつとめられ、30人近い生徒たちと「写真」に向き合った大森さん。 現在、北仲スクールではワークショップの修了展を開催中。また今月4月29日(金・祝)には、ワークショップと並行して開催されていた連続公開講座「そして世の中には写真に写らないものがある」の3回目にして最終回、題して『21世紀心霊写真学会のテーマソング』(ゲスト:アルフレッドビーチサンダル)が予定されています。
大森さんにとって「写真」とは?
写真との出会いから自身の学びの体験、そして現在の活動を通じて、大森さんが北仲スクールで今回経験されたこと。
大森さんが現在進行している、あるシリーズの撮影現場で話を聞いてきました。
写真集「Bonjour!」 (マッチアンドカンパニー)より
©Katsumi Omori, 2009
(※1 大森克己さんが講師を務め、2010年11月12日~2月11日までの金曜不定期で全6回、北仲スクールで開催されたワークショップ)
北仲スクールで行ったワークショップのタイトルは、「そして世の中には写真に写らないものがある」。写真について考えるならば、まずはそこからスタートしたかったんです。“真(まこと)”を“写(うつす)”と書いて“写真”と読みますし、つい「写真には本当のものが写る」と簡単に思ってしまいがちです。でも僕は、「花がきれい」ということや、「あなたのことが好き」という気持ちが、写真を撮ればそのままダイレクトにビジュアルに写されるかと言えば、本当はそうじゃないのではないかと思うんです。だから、「見ることってなんだろう」とか「写真と言葉の関係」について考えることから始めたかった。コンクールで入選するような写真の撮り方を教えたりプロの写真家として食べていくということを目標にするのではなく、写真と付き合い始めて時が浅い人たちと共に写真について話したり、考えてみるワークショップにしたかったんです。世の中にあるいろんな写真を見ながら「写真ってなんだろう」と考えつつ実際に写真を撮って、「写真ってなんだろう」ということが見えてくるような授業にしようと思いました。

この日、大森さんが撮影していたものは「まだ内緒」。北仲スクールで現在開催している
修了展では大森さんの新作も含まれていて、そこで発表するかもしれないと教えてくれた。
今回のワークショップでは、30人程度のクラス枠に対して170人以上の応募がありました。写真を送ってもらって試験して、という選び方もあったんだけれど、そうすると今回僕が集めたかった「写真を始めたばかりの人」から離れてしまう。だからといって、写真も何も見ずにどの人が面白いかなんてわからないでしょう。だから、公平に抽選しました。結果、若い人や学生が圧倒的に多かったんですが、 写真を勉強している美大生ばかりというより、大学生もいれば主婦の人も働いている人もいるといった、普通の学校ではないような生徒のバリエーションがあって面白かったと思います。クラスで進める授業では、隣に座っている人がどんな写真を撮ってくるかということの影響は大きいですから。アイデアや発想、いるべき場所ややり方は、お互いに学び合える。こういう機会だから、普段の自分の生活環境で出会えそうにない人たちからも刺激を受けてほしかったんです。あと、始めたばかりって何でも面白いじゃないですか。もちろん良い事ばかりとはいかないけれど、気持ちは熱いし、前向きだし、そういうものは続けていくうちに慣れていって忘れてしまうから、毎日「初めて」の気分でいられればそれが最高。今回受講してくれた人からは、未熟な部分も含めた「初めて」が感じられて、僕としてもとても興味深かったです。
写真集「Cherryblossoms」(リトルモア)より
©Katsumi Omori, 2006