

今日は、横浜でアーティストに寄り添った活動を続けているFar East Contemporaries 代表で、アートフェア東京2011のエグゼクティブ・ディレクターにも就任された金島隆弘さんにお話を伺います。
【目次】横浜での活動:アーティスト交流レジデンスプログラム|
今年の滞在アーティスト チェン・ウェイ|
アートフェア東京のディレクターとして|
【横浜での活動:アーティスト交流レジデンスプログラム】
Q. 横浜での活動について、簡単にお聞かせください。
横浜のZAIM に、2008年に場所をいただいて、FECをスタートしました。
FEC の活動の中心は、「横浜市・北京市アーティスト交流レジデンスプログラム」のコーディネートです。今年で4年目になります。プログラム自体は5年目で、初年度は横浜美術館が主体となり、私はコーディネーターとして携わりました。2年目からは横浜市芸術文化振興財団とFECが共同で実施する形になり、現在に至っています。
このプログラムは、横浜市と北京市の都市間交流の位置付けでスタートしました。その前年まで、私が北京にいたこともあって、現地でのコーディネーションをする形でお手伝いすることになりました。

ZAIM(旧関東財務局)
※2010年3月閉館
毎回、北京に住む若手の中国人アーティストを横浜に招き、いろんなアーティストと交流してもらったり、美術関係者に会ってもらったりしながら、2、3ヶ月間かけて横浜で滞在制作をしてもらい、そして新作を発表する、ということを続けています。
Q. 横浜に招くアーティストはどのようにして決められるのですか。
第三者の方に意見を頂きながら決めています。初年度は中国の中央美術学院の教授の方にご意見をいただきましたし、2年目以降は欧米でも活動しているインディペンデント・キュレーターの方やアジア・アート・アーカイブという組織のリサーチャーの方に入っていただきました。毎回、個人の意見に偏らないように、複数の方と議論しながら、おもしろいアーティストを選定するようにしています。
選定にあたり重視している点は、まずは日本に興味をもっていること。それから、なぜ今の時代にこの作品を生み出しているのか、ということを考えさせるようなアーティストであることです。作品が単に美しいということだけではない。それから、交流プログラムですから、いろんな人と話をすることに対して積極的であることも大切にしています。
Q. レジデンス事業は各地で行われていますね。横浜で取り組んだ5年間で感じたレジデンスプログラムの意味や効果について、どのように考えていますか?
滞在中に、アーティストがどんな人に会ったか、どんなことを経験したか。 これがとても重要だと思っています。
正直、今、各地で行われているレジデンスプログラムの多くが、“箱”だけというか、「(アーティストを)連れてきて、滞在日程と展覧会をする」という枠組みだけが決まっている。その間は何もケアしない。そういうところが多い気がします。私は、滞在中にできるだけいろんな人に会ったり、日本でしか得られない経験を積んでもらうような機会を、作家とコミュニケーションをとりながら、多く設定するようにしています。
幸い、横浜でのプログラムは毎回一人のアーティストを招聘するので、丁寧なコミュニケーションを保つことができる。どのアーティストも必ず、京都や東京に行きたいという希望を持っているので、毎回一緒に行きます。彼らの希望でもあるし、一緒に行くことで私たちも気付かされることがたくさんあります。こういうフレームがあるから誰か来ればいい、それで自由にやってください、ではなく、もっと関わることでお互いに学ぶことができる。 その中で、プログラム自体が豊かになり、横浜に滞在したことが今後の彼らの活動にも繋がっていくようなことを生み出したいですね。
Q. 「アーティストと地域との交流」とは、どんなことをするのですか?
滞在するアーティストによって異なると思います。前々回の作家は、交流そのものが作品に繋がるタイプの作家だったので、黄金町エリアに出向いたり、地元で活動をするアーティストと活動を共にしたり、横浜の中にかなり深く入り込んでいました。
でも、アーティストによっては作品制作に集中したいところで、無理に交流の場をつくることがストレスになる場合もあります。その場合は、展覧会の場で、作家トークや、作品を見ながら市民と作家が交流できる場を設定しています。
もう少し広い目でとらえると、3年前のアーティストは横浜で写真の作品を制作したのですが、その作品が今は欧米の展覧会で発表されています。つまり、作品を通して横浜の風景が世界中に巡回するわけです。これは、世界と横浜がつながるひとつのよい機会だと思います。
Q. アーティストと地域が出会うために大切にしていることは。
まず、アーティストの希望をしっかり聞くことから始めています。例えば2年前のアーティストは、日本の普通の風景をみたいと。で、創造界隈を実際に歩いて黄金町や寿町などのエリアを歩いて巡りました。歩くことで、街の日常の景色が見えてきます。横浜で何を得たいのか、アーティストの個性によって違いますから、それをきちんと汲み取るようにしています。
それから人との出会い。特に地元の横浜美術館やBankARTには必ず伺って、キュレーターやディレクターの方にご挨拶しています。
Q. 中国のアーティストは、横浜のどのような点に興味を持つのですか。
みなに共通する感想は、(横浜は)非常にきれいであると。それは北京が汚いとも言えますが、ごみが落ちていない、ほこりがない(笑)。
それから、東京に行くと、人の多さ、スピードの速さに、彼らは疲れてしまいます。それに比べて、横浜は、もう少し客観的になれるというか、距離を置きながら自分のペースで物事を受け止められる。 でも東京にも遠くない、ということで居心地がいいようです。また、東京は人が多すぎて、誰とコミュニケーションをとればいいのかよく分からないけれど、横浜では、一人ひとりとじっくり話をして関係をつくることができる。スケールがほどほどの大きさなので、密度の濃いコミュニケーションを築くことができる。横浜のいいところだと思います。
Q. 横浜のどんな場所に興味を持ちますか。
2007年の作家は新しいものやテクノロジーに興味を持っていたので、みなとみらいエリアが大好きでしたね。彼は、みなとみらいエリアを扱った作品を制作しました。逆に、2008年の作家はローカルなものが好きで、特に地元・横浜で活動しているART LAB OVAの蔭山ヅルさんと一緒に、彼らがやっているバーで一日店長をしたりするほど仲良くなっていました(笑)。最後にはレジデンスをしていた場所でOVAの方と一緒にパフォーマンスをしていました。
2010年のアーティストは、とにかく作品に真摯な作家で、ずっとYCCに籠って2カ月の間に大作10枚を描きあげました。
Q.お話を伺っていると、街並みや生活、人と会えるところが好まれるようですね。
生活の分かるスケールで日本を楽しみたいというのと、京都に皆行きたがる。
日本には古くていいものがいい形で保存されて残っているということに、中国のアーティストはとても敬意を払っています。中国では古いものをどんどん壊してしまって、特に建物に関してはほとんど残っていないからです。お寺には本当に感動しているようです。日本人が持つ保存に対しての姿勢や、いいものに価値を見出して大切にする心に感心しているようです。
そこは私たちが逆に気付かされる点です。